武田俊

2021.1.3

空中日記 #031|ときには味噌おでんのように

11月9日(月)

4時に目が覚めるも真っ暗で怖いので、がんばって二度寝して7時に起きる。調子悪い。二度寝すると結構な頻度でウツ傾向となるから、目が覚めたらもう活動しちゃったほうがいいのかもしれない。納豆ご飯、読書、BCAA、腹筋、ベンチプレス、プロテイン。メランコリーの薄皮を剥がすように。

オンプラ今週は他の曜日のパーソナリティが互いにゲスト出演をするという趣向。ずっと話したかった大福さんとサウナ、ラグビーを中心におしゃべり。大福さんの体格の良さ、ラグビー由来だとわかってなんだかうれしい。観戦スポーツ、とくに球技の中では野球以上にラグビーが好きだから、そのプレイヤーは無条件に尊敬してしまう。

11月10日(火)

昼起きてTLなどを見ていたらエイベックスが南青山の比較的できたばかりの自社ビルの手放して、賃貸で入居するというものが流れていた。

ぼくがluteに参入したのは2016年で、その時期はまだ代表の五十嵐さんが所属していたエイベックス・デジタルの社内PJという枠組みだったからエイベックスに出向いていた。その時期にこの本社ビルは莫大なお金をかけて建設中で、エイベックスはグループ会社ごとに一部分かれながらオフィスビルに分散入居していた。ぼくたちは六本木一丁目駅直結の泉ガーデンタワーに毎日出かけていて、付近はザ・オフィスビルに入居するような企業ばかりだったから、まったくクリエイティブなにおいがしなかった。

高層オフィスビルが嫌いだ。とても文化的なものが生まれる風土ではないから。むしろそこにいると、イケてるものとして演出されたテレビドラマ内の企業の社員と自分をかぶらせるようにして仕事をしている人がたくさんいる。KAI-YOUをやめた2014年、色んなところからオファーをもらったけれど、すべてそういったビルに入居する企業だったからありがたくもお断りしたくらいだった。

なので客先でない場所、むしろ自分が(所属こそしていないけれど)日々通う場所として高層オフィスビルが設定されたのは他にない体験で、それはそれでおもしろいものだった。フロアの隅に申し訳程度に設けられた喫煙ユニットからは毎日人がはみ出ていて、くすぶった不健康で甘い匂いをそれとは対象的な青白い蛍光灯で照らされた空間にただよわせていた。

11月11日(水)

7時起き。午後は「MOTION GALLERY CROSSING」収録。ゲストは編集者の影山裕樹さん。マジックワードで語られがちな「編集」について、それぞれの言葉で体系的に話ができたような気がする。長井さんもばっちり質問をぶつけてくれて、いい回になりそう。ゲスト1名で3エピソード+1エピソードを2人で振り返り、という今回の変則的なパターン結構ありかもしれない。リスナーとっての体験として、ゲスト2名での4エピソードとどちらが豊かなものなのかリサーチしていきたい。

それはそうと収録時、影山さんとぼくの髪型、あごひげの生やし方、眼鏡の形がほぼニアリーイコールで、長井さんに「ぼくと影山さん、キャラかぶってる?」って聞いたら「ふふふ」と答えられた。

11月12日(木)

コロナの重要なKPIとして感染者数ではなく実行再生算数を追っているのだけど、この日は1.26とこれまでに比べて増えていた。

ブロンプトン、サドルとハンドル周り微調整した。ようやく身体全体がこの折りたたみ自転車に慣れてきた感じ。独特のフレーム剛性と反発と乗り味。ロードバイクとはまた違う、楽しい乗り物だ。週末は新幹線に初めて乗せるので、それも楽しみ。

音声メディアについて日々発見があるようで、たまに気づいたことをTweetしている。この日いくつか連続でポストしていたようだ。

11月13日(金)

11月からBONUS TRACKのチーフ・エディターになった。このエディターという呼称は内沼さんがこの旧線路跡に登場した町を多分に雑誌のメタファーとして捉えているからだ。20年続くということが決まっているこの雑誌を、どのように「編集」していけるか。連載陣がテナントで、ギャラリーや広場などで開催されるイベントは第一特集、第二特集といったものだろう。読者は──イベントごとに訪れる人や、生活の場として活用している地域住民のみなさん。そんなふうに考えて、中長期的な目線で編集の技術を扱うことができるのは、とてもありがたくうれしいことだ。

それで金曜は定例の会議があるから、できるだけ現地に足を向ける。その後もすぐ移動するんじゃなくできるだけいたい。だからそこで人と会う約束をすればいいんじゃないか。という発想で今日は定例会議のあとにネオさんとおしゃべり会。最近読んだ本とかそういう話をしながら、あたたかかったので大浪漫の魯肉飯を一緒に食べた。最近読んでる本でぼくがあげたのは、都甲幸治『「街小説」読みくらべ』。立東舎から出ているこれが、とてもいい。

食べながら話してたら、加藤賢策さんが別のテーブルで打ち合わせをしていて懐かしい気持ちに。終わりしなに一緒にコーヒーを飲んで少しだけおしゃべりした。それぞれの今年の仕事について、怒涛の一年を振り返る。

夜、Instagramでフォローしているとある尊敬するアスリートが読んでいる本をアップしているのを見つける。どれも表層的なビジネス本や自己啓発の類いでむむむ、となる。

夜ブロンプトンで名古屋へ戻るための新幹線輪行にはじめてトライした。自宅から東京駅まで走り、ぷち輪バック(ぼくが見つけたものの中で、もっとも小さくなるブロンプトン用の輪行袋)に入れて新幹線へ。事前に最後部の座席と大型荷物置き場の予約をEXでしておいたので、びっくりするくらいスムーズ。

そしてブロンプトン畳んでしまうとこれも驚くべき小ささなので、大型荷物置き場もはやいらないような、なんなら網棚にすら入れられそうな気がする。このサイズの自転車が、これだけしっかりとした剛性があり、フレームサイズが確保でき、故によく走るというのはやっぱり驚くべき技術の集大成なんだと思う。

名古屋駅から実家への道のりもスムーズ。名古屋は車の運転が本当に粗い。ウインカー出さないで車線変更とか普通だし、タクシーは信号無視したりする。そういうものを目にするたびに本当にげんなりするのだけど、夜中は全然車もおらずロード並の速度で帰宅できた。帰宅即、母にブロンプトンを自慢。

11月14日(土)

3ヶ月ぶりの定期検診。午前だし自転車で走ったことのない道なのもあって、車の後部座席にブロンプトンを積んで向かうことにする。これもやってみたかったこと。足元の部分にぴったりはまって固定化されるので、トランクよりいいかもしれない。診察後母と焙煎所が倉庫を借りてやっている長久手のカフェ「IMOM COFFEE ROASTERS」でラテ。そこからぼくだけブロンプトンで帰路につくと、車よりも早いタイムで帰ってくることができた。

自転車の原初的な楽しみを、ブロンプトンは思い出させてくれる。つまりすべての移動が旅に似ているということ。ロードほど速度がでないことがデメリットではなく、「ゆっくり走ってよいこと」というメリットをもたらしてくれる。

午後、いろんな意味で噂の新しい久屋大通公園へ。ここはあの忌まわしきミヤシタパークと同様、自治体と三井不動産がタッグを組んで公園をアップデートするという座組のもので、さてどんなものかとリサーチに出かけたのだけど、事前に聞いていた通りの醜悪さだった。公園とは名ばかりでメインとなるのは商業施設を両サイドに構えたお仕着せの遊歩道。商業施設部分の建築はまるでプレハブのようなお粗末なユニットで、入っているのもここにまったく必要のないハイブランドもしくは没個性的なもの。想像以上に文化的に悲惨な状態で、しかしある程度の人は集まっていたのがまた悲しく名古屋らしいとも思う。

そのまま真っすぐ市役所方面に進むと芝生の広場があって、そこに青木さんやミッキーたちが会社をつくって運営しはじめたフードトラックが停まっている。取り急ぎラテをもらい飲んでいると青木さんがやってきて、バイトの子がもってきたホットワインの試作品というのを一緒に飲ませてもらう。

そのあと、串かつラブリーへ。18歳で地元から離れたから、夜の名古屋の町を知らない。正確には情報と知識はあっても、行ったことがないからバイブスをつかめない。だからザ・名店に連れて行ってもらえるのはとてもうれしい。家のおでんはシンプルに出汁で煮たものに味噌をつけて食べるスタイルだったから、おでんのつゆの部分が全部味噌なのは初めてで、その濃厚さがどんなものかと思ったけど、これはとても素晴らしい。青木さんはさらに濃厚でもうつゆではなく真っ黒になっている店を夫婦でずっと通っているらしい。どんな味なんですか、と聞くと「うーん、そう、カヌレみたいなの!」という。カヌレみたいな、味噌のおでん。食べたい。

そのあと二人でバーへ。サントリーがやっているラウンジで、東京でいえばイーグルや昴のような形態なのだろうけど、グレードの高いウイスキーがたくさんあって楽しい。二人で何杯かソーダ割りで飲んで、ぼくは途中からロックへ。たくさんしゃべってタクシーで帰る。帰り道、じんわりとした感動に包まれる。捨てるような気持ちで出ていった町で飲んでいると、なんだか同じカウンターの違う席に、地元に残ることを選んだぼくがいるような気がする。そちらはどうだい、という気持ちが故郷をあたたかくする。

 

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11月15日(日)

ホークスが4連勝で日本一に。圧倒的過ぎて、セ・リーグとは……? という気持ちに。
cakesがホームレス記事で炎上。前回の幅野さんのものから一向に反省がないというか、もはや何が悪いのかわかってないのではないか、とすら思ってしまう。まったく信頼ができなくなり、怒りがふつふつと湧く。

せっかく定期購読マガジンをベースにした、セミクローズドな執筆環境に慣れてきたところだったのに、これでは正式に運用を改める必要を感じる。そんなことをポストすると、いろんな人から「実は自分もそう思っているんです……」とメッセージが届いた。