武田俊

2021.1.4

空中日記 #034|ここからはDOするだけの日々だから

11月30日(月)

月曜はラジオがあるからスタートを遅く設定しているのだけど、この日はなぜか朝から色々。昼、昨日のゴロ煮をベースにしてパスタに。といってもバターを加え味を洋風に微調整し、水で少し伸ばした上で固めに茹でたパスタをそこで少し水分を吸わせるよにして和えたくらいだけど、これが抜群に美味しかった。浸透圧のちょうどよい影響もあったんだろう、しっかりとパスタに味が染みた。じゅんこにも大好評。

オンプラのゲストは、長井短さん。本を出したのもあって応援したかったし、podcastのチームでラジオに出陣、みたいなのも楽しいんじゃないかという趣向。おしゃべりはもうバッチリで、我々のシンクロ率が日に日に向上していることがぼくはうれしい。ジャージでラフな長井さんもキュート。

12月7日(月)

めっちゃたくさんの素敵なことがあった週末だったけど、cakesの騒ぎからnoteというプラットフォームに何かを記すことをやめたくて、それでやめて、そのもやもやの間に日記を書くというルーティンがぼくの生活から抜けてしまったのは大きな損失だった。発表することがセットでないと日記を続けることが難しくって、それならばあるひとつのプラットフォームに依存するのは危険すぎる。だからやっぱり自分のサイトをベースにしたテクストの執筆と発表が重要なんだ、っていうところに戻ってきた。そういうことをnoteに書いて、それでやっと何かの区切りがついて、久しぶりにUlyssesをひらくことができた。雑に雑に日々を書こう。

10時起き。やっと疲れが抜けた感じ。誰もいないリビングにめちゃくちゃ光が差してて、そこん中でサンドイッチを食べる。今日は忙しい日。午前は雑務と作業。忙しいとNotionのtaskボード見ないで、とりあえずやばいやつからやっちゃうけど、それが本当は一番やばいってこと毎回忘れてる。昼は時間がないから、昨夜つくったソーセージと玉ねぎとピーマン、つまりは冷蔵庫の中でヤバそうになってる奴らをあごだしと塩が混ざってるナイスなやつで炒めただけのやつを、マルタイラーメンの上にのっけて食った。雑な大学生の自炊メニューみたいでテンション上がる。

14時からまちづ社のMTG。新制M.E.A.R.L.に向けた最終調整。ここからはDOするだけ。年内は動きながら考え、年明けにがっと新機軸を打ち出していくことにする。小田さんと寺井さんと話していると、町に出てずんずん進みたく毎回なる。

16時、MOTION GALLERY CROSSINGのMTG。オファーフローの見直しと、今後のテーマについて。podcastだから掘り下げられる内容で、かつ年明け公開というタイミングでよいテーマはなんだろうって考える。リモートだとこういう創作的なブレスト、うまく行きにくいのなんでだろ。対面ではなぜ雑なアイディアを壁打ちしあえるのかは、なんかコミュニケーションの本質的な部分に関連する疑問だと思う。

晩ごはん、じゅんこが20時帰宅ということで準備する時間もないしコンビニにしてしまう。親子丼。コンビニの丼もののご飯は、加工品って感じの炊き方というか固さでそれがすごく苦手だ。工業製品みたいな食事に何かが救われたり楽しかったりするときってあるけれど、ふつうの暮らしの中ではできるだけ排除していきたい。単純に体調に現れてしまう。

20時、ブックストアエイドのMTG。久々に花田さんのお顔を見たら、背景にかわいいパッチワークみたいなクリスマスみたいなのが貼ってあって、すごく元気がでた。ぼくは結局かわいいものがすき。ブックストア・エイド、今年がんばったことの集大成的なもののひとつなんだよなあと思う。最後しっかり本にしたい。3本MTGした。リモートのMTG、やる前はどんなものでも「めんどうくさいなあ」「休みたいなあ」って思うけど、はじまってしまうとすごくしゃべるし終わったあと力が湧く。それでも絶対毎回面倒だなあって思い続ける。でもやる。DOするだけだってフェーズまで来たプロジェクトが、この時期気づけば多くなっている。

オンプラ、今日はSURLY Stragglerで。久々に自転車NAVITIMEを起動して、走行ログをとることにした。立ち上げると地図が表示されて、目的地を設定するとおすすめのルートが複数表示されて、大通り優先だとか坂道優先とかから選ぶことができる。で、左下の自転車アイコンをタップするとサイコン表示になるから、すでにルートが明確な場所を走るときはこのモードがよさそうだった。このSURLY 、純正のキャリアもつけてるし軽量パーツ一切使ってないからたぶん12キロくらいの重量がある。グラベルだからそれでいいんだけど、ペダルもフラットだ。それで平地スプリントで40〜50キロくらい出せたからそんなにひどい脚力じゃあないんじゃないか。息上がって半蔵門。8キロほどで30分。信号含めて平均巡航が16ほどってことで、次は信号の間タイマーを止めてみようかなと思う。

ゲストはT.Oさん。作曲するときはピアノ。メロディの確たる部分と主要コードがまとまったら、あとはアレンジのコンセプトを決めて調整するらしい。その作業工程を高速で話していくときの、手つきというか話しの運び方が魅力的なひとだ。butajiさんの新曲「acception」をかけたら、すぐにTweetしてくださってうれしい。

お風呂でKindle、津野海太郎『日本人と読書』。

12月8日(火)

昨日帰り道も平地でスプリントなんてしたもんだから(40.3キロだった)ドーパミンどばどばでなかなか寝付けず、CBDグミをぶちこんだ。ぼくのCBDグミはかわいいくまちゃんの、でも強烈なやつ。一粒25ミリ。100粒入りのでかいやつをそろそろ追加注文しなきゃ。

11時起床。完全なジェットラグ。死に体でリビングに向かうと南向きの窓から光が差し込んで、フローリングがそれを反射して部屋の中に劇的な光が満ちていて笑ってしまう。夏はこんなふうじゃないなって思ったら、冬になったから太陽の位置が下がってこんな光。そういうことだった。

カウチで田島列島『水は海に向かって流れる』が届いていたのでひらく。Kindleで読んでいたけど、これ紙でもっとかないといけないやつ。すばらしい。田島列島の書く漫画のような小説を、ぼくはたぶん書いてみたいのだと思う。シリアスや切実な気持ちにさせられる物語の基軸があって、その上で軽妙でかわいらしくてばかばかしいナラティブや無意味な運動が展開されて、それで風景に抜けがある、そんなお話。

13時になったので、外に出る。重い。adidasから届いたあたらしいパンツを履く。あたたかい。それでとんくる。豚ばらラーメンというのにする。ここは無化調のとんこつのスープをただ味わう場所だから豚ばらなんかいらないのだ、ということが一口目でわかる。コーヒー豆やピスタチオの入ったチョコレートを買う。ついでに旬で買う予定はないけどかたちの魚を見る。

かたちの魚というのは、つまり丸魚のこと。今日は釣りアジとワタリガニ、あと活さざえ、サンマ、ヤリイカなど。サンマ、だいぶ型のいいの値が下がってきた。不漁がすこし改善されたのかしら? サクのコーナーには今市場にあまりまくっている養殖ブリのサクの横に、養殖ヒラマサのサクが並んだ。歯ごたえはヒラマサのほうがありそう。ゴリゴリの刺身が好きだから、今度試してみよう。

コーヒーを淹れてカウチひたすら楽しむぞ、と思うも頭が重く眠ってしまう。やはり火曜は完全にオフと考えるのがベター。YoutubeでPASS GUARD FITNESSのチャンネルの白帯向けのビデオでひたすら明日の柔術クラスのイメトレ。いろんなことがやりたくなっちゃうから、毎回自分の中でテーマを設けたい。明日は自分から引き込んで、相手にパスさせずひたすら分けきること。それを徹底した上でチャンスがあれば仕掛けたい。柔術、そのことばかり考えさせられてしまうような魔力がある。途中で町屋良平『ふたりでちょうどい200%』をひらく。今読みたい感じのやつなのに、体力がないから進められず。

夜、ほんとうは『アボカドの固さ』を観に行くつもりが断念。前原くんと山口くんの勇姿を見たかったけど火曜はだめみたいだった。ごめんよ。じゅんこ帰宅し、旬のお寿司をトライ。期待していた鮮度ではなかったけど、これがかれらの本気とは思えない。録画していた「100分de名著」で、岸政彦による『ディスタンクシオン』。ずっと読みたいと思っていたからこれはいいタイミング。紀伊国屋行く時に買ってこようと思う。文化資本のこともっとちゃんと考えたい。そうしたら、急に学びのモードになって、どういうわけか学生時代に断念したままの長い小説を読みたい!と思った。『薔薇の名前』か『ユリシーズ』だと思った。エーコかジョイス。家には確実に『ユリシーズ』はあるから、そこからにしようか。

12月15日(火)

10時目覚めもう一度寝る。そのあと11時起。
起きた瞬間あまり調子が良くないのがわかったから、無理なく行くモードにする。明日やることやりたいことについて、2つのモードを用意しておくことがひとつ重要なことかもしれない。あらかじめプランBを用意しておくことは、仕事ならやってることでそれを生活に適用すべし。生活あっての仕事だろ、と思う。それで、ベッドからスマホで連絡や指示出し。luteの末期の頃を思い出す。

冷蔵庫に入ってたじゅんこの買ってきたパンを食べる。竜田揚げサンドとなんかチョコの。甘いのとしょっぱいの。自分では買わない類のものなので、少し楽しい。

午後。Twitterで柳美里さんのツイートを見て、むくむくと考え膨らんで連ツイ。結構いいこと言ってる気がする。こういう風にTwitterは使うべきだなと思う。

『サイバーパンク2077』がバグが多く返金対応をしているらしい。けど、ぼくはこのゲーム久々のスマッシュヒットでこれだけ没入できているのは『fallout3』以来だ。設定、美術、衣装、ナラティブ、UIどれも大変に好みでフィールドに散らばったテキストを集めて読むだけでもたのしい。

たぶん今中盤終わりあたりで、やっとフィールド感覚が芽生えてきた。
ネットを徘徊していたら様々なオープンワールド系のゲームのフィールド面積を比較するビデオを発見する。これはおもしろい。サイバーパンク、やっぱりけっこう広いんだなと時間。そして最後、いいオチがついていた。

12月16日(水)

MGCの収録日。月に1度4本どりをするわけだけど、ラジオやトークセッションとは異なる独特の疲労感を前頭葉に感じる。きっとそこにいな人、どんな時間軸にも所属可能な見えないリスナーに向かってどう語りうるのか、ということを常に脳が思考しているんだろう。

今日のゲストはレ・ロマネスクのTOBIさんと、GOMESSくん。TOBIさんの鉄板ネタだという「フランスに無目的で向かった瞬間銀行強盗に合うも、言葉がわからないから強盗だと気づけない」というエピソードに吹いてしまう。

今回のテーマ、クリエイティブとメンタルヘルスなのもあってかそれぞれの話に互いが傾聴してしまいがちな序盤。なんと通奏低音のような部分を拾い上げてそれをベースに展開すると、2エピソード目移行の展開が広く見渡せたようだった。他の人もそうだったみたいで、その道筋をたどるようにその後の会話は進んでいった。ラジオとpodcastで鍛えられたからだろう、比較的得意だったファシリテーターとしてのスキルが高まって、新しいフェーズに入った感じがする。スキルツリーが育つことによって、スキルのあり方の体系が見えてくる感じ。近くこれは図式か言語の形に落とし込めたい。忙しいと自分の能力を体系的にとらえることを、おろそかにしがち。

 

収録後、今回もソファでダウン。柔術のクラスの日だったがあまりの疲労から諦める旨を渋さんに連絡しようとiPhoneを取り上げると、年末調整のため欠席とのこと。無念ですね、と言い合ってぼくはみんなと神保町のお魚の立ち飲み「スタンドぼてふり」に。長井さんが前に使ったことがあるということで、感染対策を考慮して外の席で1時間1本勝負。

ぼてもりという、マグロ、ヒラマサ、うに、いくらに海苔が添えてある刺盛りに、アサリのにんにく、カワハギ刺、アブラボウズの煮付、いかごろ煮などめいめい気になったものをどんどん頼んでいくと机の上はあっというまにいっぱいになった。幸せな気持ち。お酒はコーナーがあって、自分で選んでサーブしていくスタイル。

最初みんなと話すことを重視したくて、ヒキさんが持ってきてくれた赤星を飲んでいたがあんまりに寒いのでお酒コーナーを探検すると、ポットがあってこれはどうやらお湯割りをつくることができるらしいと気づいた。それで芋のお湯割り。やけどするくらい熱いのが、屋外席だとありがたかった。

それでも体の芯が徐々に冷え込んできて、予定通り1時間で終了。長井さんと桃鉄やりたいよね、って言いながら帰る。

12月17日(木)

朝、起きると昨日の収録の時に広げた会話の断片みたいなものが、まだ頭の中に残っているような感じで騒がしい。よくない状態だなと思って、思い切って午前中を捨てた。やっぱり4本どりのpodcastは、ラジオよりも反動があるのかもしれない。

午後から事務作業と思ってタスク整理していると、BONUS TRACK、M.E.A.R.L.、大学とやらないと行けな細かい作業がかなり積まれているの気づく。アバババ、と思ってとりあえずお金回りのものから処理。現場での仕事(しゃべったり)は、最終的にそこに体を持っていけばなんとかなったりするものだから馬力でどうにかなるけれど、こういう手作業のものはどうにもなんない。

だから計画的に進めていたはずだけど、12月っていうのはその計算がぶっ壊れる時期なんだったってまた今年も思い出した。これ、毎年やってる気がする。

午後からRAILSIDE。今日はうちわの忘年会。持ち寄りせいだったので、ぼくは家のそばの推せる個人経営のピザ屋さんにデリバリーをお願いした。正確には配達エリア外だったのだけど、対応してもらえることに。じんわりうれしい。

19時になって少しずつみんな仕事をやめて、カウンターに集まる。ピザの配達は19時30分にお願いしていたのだけど、何か準備に時間がかかって遅れるとのことでそわそわしだす。そわそわしないように時間指定したのに、そわそわするのはかなしい。無事届くと大好評で、みんなぺろっと食べてしまった。

12月18日(金)

昨日の反動のまま、10時からBONUS TRACKのMTG。まちとお店は毎日そこに人がくる。だからイベントの企画を考えたり、あるいはその仕組みをつくる立場として関わっているけれど、毎日決まった何かをする、誰かを待つ、という働き方と向き合うことが自分にとっては新鮮だ。だからこそこの現場では黒子のようにして、まちとテナントと住民こそが主役としてヘルシーに関係していくことのできるようなデザインをしていきたいって思う。

色々たいへんだー、なかなか思うように機能しないなとふと思ったけど、数日前に今自分が取り組んでいることの困難度を自分で言語化していたようだ。

12月19日(土)

BONUS TRACKでの「BOOK LOVERS HOLIDAY」に出かけるために、昼過ぎまで作業をしたあと現地へ。家をでしばらく進むと予報にはない雨が降ってきて、それが次第に雪のようなものにかわり、最後にはBB弾ほどのあられになった。気象学的になにか雹とあられの違いがその氷の礫の直径に応じて定められていたはずだけど、ちっとも思い出せなくて、でもたしかあられの方が小粒だったという記憶であられだあれだと思って向かう。

本は紙だ。紙は水に弱い。到着即暫時臨時閉店。みんな撤収してぽけーっとしてしまい、雨宿りをしてた阿久津さんからコーヒーを買う。阿久津さんにしてはなんだか暖かそうなアウターを着ていて(阿久津さんは冬も薄着の印象)「阿久津さん、それあったかそう!にあうね!」といったら「ありがと!遊ちゃんに借りてるの」とのことで、やっぱり遊ちゃんは偉大。

むねまささんブースで倉谷さんとおしゃべり。もはや夏の松戸での撮影以来だった。むねまささんが「倉谷くんは安心するんだよ。だって内沼くんも小田くんも、それに武田くんもちゃんとしてるじゃん?」って言っててそれってどういうことなんだい、と思ってへへへと笑っていた。

各ブース回ってごあいさつと買いもの。紙版の『NEUT』は自分たちのメイフィールドをちゃんとWEBだと定義していて、だからこそ紙からWEBに横断できるQRコードを用いた目次づくりなど一貫していて気持ちがよかった。平山くんに明後日ラジオよろしくねという。

エランドプレスのブースで石川直樹『東京 ぼくの生まれた街』を買わせてもらう。九龍さんとも久々におしゃべり。大福さんのオンプラ火曜に出られた話。最近のぼくの喋り仕事についてと、編集のあれこれ。「自分ありの編集のあり方を体系化して語りたいよね」と盛り上がる。

鍵っ子さんがあられが降っている間にfuzkueに入っちゃったと知って、出てくるのをまってでも『トトノイ人』ではなく、月日に納品したばかりという閉鎖病棟の入院期である『本日は最前線の吉日』を3冊まとめて買う。①だけ電子で読んでいて、紙で全部ほしかったのだ。

執筆、編集、デザイン、イラスト全部鍵っ子さんご自身。「全部自分でやろうと思うんですよ」ってうれしいそうに言う。最近はなにかの筆ペンイラストと何かのコーディングも毎日のルーティンに組み込んでいる。とうとう朝の日課についての本も自分で書き始めたとのこと。これもルーティンに組み込んでいるだろうから、ポモドーロ的に25分ずつだけ毎日やっているのだろう。

こういうことが生活と連動した本当の創作だって心から思う。で、それができないぼくは……と罪悪感を得たりすることが鍵っ子さんと話しているとないのがおもしろい。誰からの要請もなく、ただかれは楽しんでそれをやっているからなんだろう。鍵っ子さんと週に3回くらい会いたい。鍵っ子さんが今のぼくの精神的メンターで、ロールモデルだって思う。大人になると年齢的に敬語でも友達みたいに親しく話すことができるってことを知る。

『東京 ぼくの生まれた街』を阿久津さんと見る。これ、装丁がすごい。幅広の帯、に見せかけて実はカバーという細工。初めて見るタイプの蔵本で、デザイナー誰だろうかと思ったら、川ちゃんと一緒に『STUDIO VOICE』をやっていた坂脇慶さんの仕事だと知る。それで坂脇さんとの邂逅を思い出した。

B&Bがまだ2代目店舗だった時代の新生『STUDIO VOICE』のロンチパーティの時だった。ぼくは客のひとりとして行って、特に打ち上げ会場を考えていなかった川ちゃんに変わってその場で新台北に20名弱の席を確保した(奇跡だ)。そこで坂脇さんと話して、そうすると中学の時に家庭教師をしてもらっていた中西さんと友人だということが知れた。

そんなのもあって楽しくて、2次会にもついていくとそれは磯丸水産で、外れのテーブルに一人下を向いた眼鏡の男性がいて、誰かとはぐれちゃったのかなと思ってしゃべりかけたら、それは一人で来ていた写真家の金川晋吾さんで、それからかれとは一緒に仕事をするようになったのだった。

夜、冷蔵庫の中であまっていた白菜、たまねぎ、じゃがいもをミヤタヤのベーコン一緒に炒めたのち煮込む。コンソメもひとかけ。それをハンドブレンダーで粉砕! そのあとそこに大根とソテーした鶏肉を入れて、それだけで完全栄養食品みたいなとびきりのポタージュをこしらえる。思いつきでやったけど、久々に塩分濃度までばっちりな出来でうれしい。帰ってきたじゅんこに「これは特別なとびきりのスープだよ」と言って食べさせる。気に入った様子。

12月20日(日)

朝、OPANに行ってバゲットでも買って昨日のスープと合わせて最高にしよう、と話し合って出かけるもバゲット売り切れ。ちょっと遅かった。惣菜パンみたいなのしかなく、いつもなら嬉々として選ぶ類のもを残念な気持ちで買う。でもタコとドライトマトのキッシュがとてもおいしくて復活。

今日も午後からBONUS TRACK。今日はクリスマスマーケット。ちょっと気候もよくなく、少しブースもさみしい。テコ入れの必要がある。マルサラに顔を出しはるのさんに挨拶をしようと思ったけれど、ちょっと外されていた様子。オフィスで作業もせねばで、せっかくだけどおいとまする。ずっとお会いしてない人に久々に会う時緊張するのは、結構具体的にぼくはその人のことを覚えてしまっているからで、それが相手の記憶の量と差が生じた時に翻って申し訳ない気持ちにさせてしまったことが過去に何回かあるからだ。

でも覚えている光景は失われないから、こういうふうに書けばいいんだなって思う。2010年代、三軒茶屋、三角地帯、明け方、ひまわりみたいに笑ってブルース・リーのポーズで写真に映っていた。けど、本当にブルース・リーだったのだろうか。違うぼくの知らないファイターだったとしたら、いったいそれは誰だったんだろう。

鍵っ子さんの10年前の入院記『本日は最前線の吉日』全部読んでしまう。素晴らしかった。『本日は最前線の吉日』ってタイトルはヌケメキャップに記されていた一言だったのかって気づく。何十年も統合失調症と診断されて入院している人たちの、生活の一端が見える。菓子パンの習慣とか楽しい。シリアスな部分の中に、どうしても笑ってしまうユーモアが散りばめられてて、そのバランスが絶妙だと思う。ユーモアを嫌らしくなく書ける人に、ぼくは小説書いたほうがいいよってこの何年か勧めているから、鍵っ子さんにもそうメッセージを送った。

そしてこの本を特別にしているのが、状況としてというか結果としてというか、語り手が抑うつ状態で入院していることから、いわゆる「信頼できない語り手」の立場となるからだ。それが必然的にナラティブに奥行きを与えている。ぼくの書くものの、ある時期からは同じフェーズに入るわけで、その状況を活かした書き方いをしたいって思うけど、そんな仕掛けとかどうでもいいからとにかく書けばいいのになって思う。