武田俊

2021.5.19

空中日記 #48|カオパックンと呼んでくれ

5月8日(土)

日記が書けなくなったのは、完全に執筆を本格稼働したからで、何か長いテキストに向き合うことを平行して行うのはどうも難しいようだった。
でも日記は書きたい。
あったこと、食べたもの。そしてよかったり印象的だったことを1日にひとつメインに据えて。それくらいなら書けるんじゃないだろうか。幸い写真はたくさんあるから、それを1日と1日のあいだに貼っていくというような。それはむしろ、日記として理想かもしれない。

朝、ミックスサンド。
やってくるAKRACINGのチェアのために、仕事部屋を整理。Switchでモンハン。ハンターランク20までやっときて、オオナズチが野良の人たちと一緒だと倒せない。たかくらの助けを借りようと思って連絡。夜一緒にやることにする。

午後、21_21へ。
どんな形になるのか楽しみ。久しぶりの乃木坂は、人口密度が薄いと過ごしやすいすてきな町に思えた。遊歩道、こいのぼり、遊ぶ子どもたち。5才くらいの男の子の頭が緻密に編まれたコーンロウで、このあたりで生まれ育って、こんなきれいなコーンロウを編まれるっていうのは、どんな文化的な家なんだろうと想像する。
お酒のない世界で、夜に飲食店に入るのが難しい。タイレストランでカオパックン。じゅんこはプーパッポンカリー。スタッフの方たちはみんなタイ人で、気を遣ってか「エビチャーハンですね!」と言ってくれるけど、ぼくはカオパックンと言ってほしい。

夜、たかくらとモンハン。大月さんも参戦。みんなのおかけでオオナズチを無事狩猟完了。モンハンは間におしゃべりができるから、これはほぼ飲み会だ。最近の色々について。かなしいかなしい話も聞いた。もうまわりから夭折するひとが出てほしくない。かなしい知らせにけれど、引き込まれずに思考できるようになっていて、驚いた。何かが自分の中で変化している。

深夜、執筆。最近、22時〜3時まで執筆にあて、起床は10時ごろ、というルーティンが板についてきた。世の中が静まったあとに書くのが、やっぱりぼくは向いているのかもしれない。オンプラでの時差対策にもいいかも。

推敲、なかなか方針が定まらない。私小説を書くぞ、という気持ちがよけいに働いて、テンプレ的な小説感、物語るフォーマットに則って書かれてしまっている残念さが否めない。そこで偶然流れてきた、千葉雅也×保坂和志対談の記事を読み直す。『デッドライン』出版時のトークで、これが再読なのに、大きな力になる。保坂さんの何かを読み直そうと阿久津さんに「保坂和志で1冊選ぶとしたらなににする?」と尋ねると、そこから会話がはじまった。悩みに対して、すごくフィットしたアドバイスをもらった感じ。なにかが自分のなかであらたまった感じがする。

 

5月9日(日)

日曜はだらくの食事。朝、オレオとカステラを食べちゃう。どきどきする。
AKRACINGのチェアが届いて、組み立てる。じゅんこにも手伝ってもらう。とてもいい感じ。硬球なオフィスチェアが自分の部屋にあるのはなんだか好ましくなくって、それはたぶんオフィスを思わせるからで、ならばゲーミングチェアを、でもゲーミング感はあまりほしくない。それで最上位のレイヴンというカラーが選ばれた。AKRACINGは今年からプロ野球のベンチでも採用されたので、ゲームと野球に座っているんだよ、と自慢する。文武!

昼、じゅんこと出。めちゃくちゃ暑い。
代々木上原まで歩き、大豆田とわこでコロッケ売ってたのはここだよ、ここの鰾ってお店の前でふたりがすれちがったよ、とか行って歩く。なにかすてきな、行ったことのないお店で食べようと思ったけど、暑すぎて朝日屋でひやしおろしたぬき。じゅんこはさば味噌定食。

RAILSIDEでMTG。これからの計画を練り、ドキュメントとツール環境のメンテナンス。休日に事務所にくるのは楽しい。仕事っぽい気持ちにならなくてすむからなんだろう。その後新宿。ビックカメラでハイエンドなオーブンレンジを見る。ISAMIでイヤーガード買う。はやく耳の腫れが引いて柔術を全力で味わいたい。

夜、たこやき。ブックストアエイド、最終局面へ向けてのMTG。1年がもうすぐ経つと思うと、よくわからない気持ち。この1年、ずっとよくわからない気持ちだけど、コロナはぼくに自分の体調を解像度高く観察する能力を与えてくれたような気がする。

 

5月10日(月)

久々の重く強いウツ。何も出来ず。この原因がなんでだろうかと考えたら、それは一昨日にふいい聞いた悲しい話がその遠因みたいだった。もう知り合いの中から自死する人がでてほしくないと思う。今回もまたそこまで親しい人ではなかったけれど、それはそれで悲しいし、その上でそれを選ぶことのなかったぼくとしては、なんとか自分の症状を理解し少しでもこの苦しさをコントロールしながらストラグルして生きていくことを選んでいるわけで、そのあがき自体がとても虚しいものに感じてしまうようだった。すごく乱暴にいってしまえば、自死という手段でこれを終わりにするという選択をずるい、というように思ってもいるようだった。

もしこれがとても親しい間柄の人だったらどうなるのだろうか。
あまりにも悲しいことだけれど、それを受け止めた上で「自分が死んでしまったら親しい人にこんな思いをさせてしまうのだから、絶対に簡単に死んではいけない」と強く思うような気がした。あるいは「あいつのぶんまでぼくはあがきながら生きよう」と思うような気もする。

夜、じゅんこがオリーブチキンのご飯に乗ったのを買ってきてくれる。
ぼくがヤンニョムで、じゅんこはハニーマスタードのようなの。『愛の不時着』ブームの時はとっても混んでいたが、今はそうでもないらしい。録画していたアド街で逗子を見る。

23時ごろやっと少し落ち着いて電車でオンプラ。押くんに事前に調子が悪いむねを伝えておいた。ゲストはEMPTYLOTのお二人。少し緊張されていて、できるだけそれをほどけるようによりそうにようにして話す。エンパワーしてあげたい。そう思って話すことが、ひるがえって自分をエンパワーすることになる。調子が戻る。でも放送が終わったらぐったり。帰宅して倒れ込むように眠る。

あいまあいまで『プレーンソング』を再読している。
ここのよう子のセリフがすごく好きで、でもこんなリズムで会話をどうしたら書けるのかなと思って書き写してみる。やっぱりすごく好きだ。

「あの子、きっといろんな家で食べて歩いてるからあんなブタになっちゃったのよ。
でも、猫がご飯食べてるのって、上から見てるとかわいいのね。丸くなってお行儀良くて、頭だけちょこちょこ動かしてるの。とっても一生懸命なの」
と、そこまで一通り言い終わってから、よう子は、
「ねえ、いま言った茶トラって何のことですか」

5月11日(火)

アラームをかけずに起きたら15時近かった。いつも10時台には目が覚めてしまうから、やっぱりエネルギーがまったく足りていないようだった。こないだ焼いて冷凍していたお好み焼きを食べる。

夜、じゅんこの帰宅にあわせて玄米を炊き、古座川ジビエのいのししのひき肉を使ってキーマカレーをつくった。春菊でキーマをつくってみたかったけど、買い物にでる力ががないので、冷蔵庫にあったほうれん草を使ってサグキーマ。買っておいたカスメリティをはじめてつかった。豊かな風味と最後に苦味がやってきて、とてもいい感じ。おとなのキーマができた。