4月15日(月)
朝、7時前にバトンタッチするも久々のハードめな夜だったからか、鉛のように体もまぶたも重い。送りを頼んで一眠りする。
朝、すがきやの袋ラーメン、ハム、メンマ、ねぎ。
メンマをノールックで買ったら「つけめん専用極太」と書いてあり、ふつうの2,3本の束のようなもの。メンマは箸休めのような時間のためにあるので、これではひとやすみの時間が減ってしまうため、割いて使う。すがきやのラーメンのだしはねことへびでとっている、という都市伝説を小さなころ父から聞かされて育ったので、いまだにこの味を食べると頭にねことへびがまんがみたいなばってんの目で寸胴で煮られているようすが浮かぶ。ほんとうはとんこつとかつお節。
9時過ぎに起きて、窓をあけるといちばん好きな季節の気温とにおいがして、それだけ動き出せる。全部の部屋に掃除機をかけ、洗濯機を回し、ためてしまった洗いものをすませると、今日から世界がはじまるような気持ちよさ。そのまま気になっていたグリルの奥底を磨いてみると、びっくりするくらい汚れていて、積層されたあぶらのうんちみたいなものがとれる。中沢新一『レンマ学』が届いた。
昼、青のりを入れたペペロンチーノを、卵でとじてカルボナーラみたいにしたもの
家事・育児をしていると効率最優先になって、セルフネグレクト気味になるので、自分のためだけに料理をするぜいたくをしよう、と思ってつくる。ぜいたくでもなんでもない、ふつうのこと。
イオをおむかえに行くと、同級生のすいちゃんが満面の笑みをたたえながらハイハイですねにすりよってくる。この子になぜか好かれていて、それはうれしいこと。しゃがんでおしゃべりをする。イオよりも小さいのに、すいすい動き、伝い歩きまでするので、かっこいい。10月末うまれのイオは、11月初旬に保育園の申し込みがあるため0歳児クラスではいちばん年下で、けれどからだは大きめだということが最近よくわかってきた。0歳児クラスはたぶんもっとも発育の差があらわれるクラスだから、見ているとそのグラデーションそのものが目に入るのでおもしろい。預けるとき、いつもこのまま半日ことで過ごしていたいなと思ってしまう。
その足でBCGをうちにいく。事前に服を脱がせて用意をしていると、他の子たちはカラフルな装いで、最初に呼ばれた子は先生に「まあ、なんておしゃれなの。かわいいの着てきたねえ」などとほめられている。ひざの上のイオは、保育園に置いていたサブの服に着替えていて、ロンパース型の下着は柄もなにもない生成りのものになっていた。なんだかうちだけオーガニックなヒッピーみたいな家だと思われそう。どきどきしながら順番が来て中に入ると、先生は服装についてはノーコメントで、「すてきな笑顔ねえ! まあ力も強い!」とほめてくれて、達者だった。帰りイオの機嫌がよかったので、抱っこひもで書店に。斎藤哲也編『哲学史入門Ⅰ 古代ギリシアからルネサンスまで』、末木文美士『日本宗教史』、『日本仏教史』買う。うしろふたつはたかくらのおすすめ。ミスタードーナッツも買った。限定の、けれど記憶に残らなかったフレーバーのものを食べながら『哲学史入門Ⅰ』を久々に松岡正剛式のマーキングで読む。勉強のときは、本をノートのように使いたい。
夜、長谷川あかりさんレシピの豚ロースと舞茸のバター蒸し、おみそしる(煮干しだし、あぶらあげ、わかめ、新玉ねぎ)、無限キャベツ(味噌かつ味)。
無限キャベツは、キャベツのせん切りに加えるパリパリの麺とシーズニングのセットからなる商品で、これは大量のキャベツをスナックのような気分で食べられるというしろもの。資本主義の金融的な実態のなさが加速する側面は苦手だけれど、差別化のはてにこういうキッチュでニッチなものが生まれるところは好きな気がする。豚のバター蒸しは固くならないか心配だったけど、やわらかく美味。そうか、舞茸のたんぱく質分解酵素の仕事か、と食べながら納得した。
4月16日(火)
8時にイオを預けたあと、今日はどんなことができるかなと前日から思い描くも全然できない。疲労が抜けなくてそれがうつっぽさを呼び込んでいる、という仕組みは理解できるけど、どう解除できるのか不明。運動がいちばんいいのだけど、運動するエネルギーが睡眠不足によって足りてない、というのが根本的な問題のよう。昼前になんとか立ち直って、洗濯、掃除。あっという間に15時でお迎え。
朝、ミスドのゴールデンチョコレート
おひる、家できつねうどん
夜、とりと新玉ねぎのビネガー煮、きゅうりの適当あえもの、スナップえんどうのハニーマスタード
夕方から少しずつ気力が湧いて、手早くおいしくできるものをつくろうとする。料理をする楽しみにはいろいろあるけど、そのひとつが再三書いてる「ちょっととくべつ」で、長谷川あかりさんのレシピは、簡単にできるけど意外な調味料の組み合わせで、「ちょっととくべつ」を演出しているから、これだけ支持を集めているのだろう。ビネガー煮にはこしょうをたっぷりかけるし、ハニーマスタードはふだんマヨネーズで食べているものに「こんなのはどう?」という提案として成立している。組み合わせの妙で、すごく編集的である。
4月17日(水)
イオを送ったあと、そのままタリーズで作業をしてやろうと思ったら、まさかの空調が寒くておなかを壊す。いくら初夏のように暑い日になるといっても、朝の8時すぎからクーラーかける必要はないでしょう。回転率のため? 計画が崩れて自宅に戻ってもエンジン全然かからない。頭の中に、なんだか重くて熱いどろっとしたようなのが詰まってる。
明日の授業の用意をして、掃除と洗濯をしたら、もう15時。世の中のお母さんたち、えらすぎる。っていう話で終わらせてはいけない話。家事・育児の労働ってシャドーワークっていわれるようだけど、それを陰においているのは誰だ、という話。家事はまだなんとでもなるけれど、育児の疲労というのは、実際にやっているタスクはたいしたものではないけれど、常に危機がないか注視し続ける断続的な疲労であって、これは労働の疲労と違い爽快感もよろこびもない、ただシンプルな機械的ダメージで、いちばんこたえる。そして、目に見える成果もないものだから、どんどん「自分は何も生み出せてないのに、こんなに疲れていてだめな人間じゃないか」という思考が広がっていく。
母に電話。イオの最近の様子を伝えながら、上で書いたことを話しながら「なんだか仕事の方が楽かもしれないなあ」というと、すずしい声で「なにいってんの、あたりまえじゃん」といった。薬剤師としてずっと働いてきた母がそういうので、そっか、ぼくが今疲れているのもしかたないことか、と思える。ドラゴンズがまた勝った。今年はなんだか違うチームみたい。セカンドの田中幹也は成績以上に見ていて楽しい選手。俊敏な小動物がダイヤモンドを駆け抜けているよう。その勢いで明日の授業の用意。
朝、冷凍ピザ
ひる、セブンの二郎みたいなラーメン
夜、食欲なくカレーヌードル
4月18日(木)
誕生日。年を重ねることの感慨はなくなっても、「おめでとう」といってもらえるのはこの年になっても好きである。8時過ぎまで寝かしてもらい、保育園。お昼、じゅんちゃんと出かけてランチをする。久々のこと。最近の自分たちの生活と振る舞いをふりかえって、「これかなり夫婦レベル高いんじゃないか?」と自画自賛しあう。
じゅんちゃんの最近気に入っているという四川麻婆のお店にゆく。麻婆豆腐定食に、お誕生日だからおまけみたいな杏仁豆腐を120円でつける。何度も「からくないよね?」と確認して、全然平気だと聞いていたのに、しっかり辛い。汗だくになり、途中で海老チリと交換してもらった。なんだか収まりが悪く、お誕生日なのでパフェを食べにゆくことにし、しっかり食べ終えると、お腹の調子がくるくる悪くなり、気分も悪く耳からパフェと麻婆が噴出しそうで、生きている心地がしない。トイレで全部吐くも気分は回復せず、そのげろげろのまま大学へ。なんとかこなして、空っぽの胃がけれど気持ち悪く、夜、冷凍のおうどんをくたくたに煮る。最近、冷凍うどんはのきなみ讃岐仕様で固いので、20分くらい煮た。たまごだけのおうどんが、こういうとき、とてもおいしい。
4月19日(金)
日中どたどた記憶なし。夜、この4月から新卒ですてきな会社に入った学生ふたりのお祝いを新見とする。去年の授業のときにふらっと前年受講していた学生がやってきて「先生、第一志望の企業にはいれました!」とだけわざわざ報告しにきてくれて、すばらしい、と思ったら、さらに待遇のいいところに入ることができて、報告してくれた会社の内定は辞退したらしく、とても頼もしい。
どこにしようか迷って、次から自分たちでも使えるようなところ──と思い、結局新宿で池林房にして、「ここはむかし、椎名誠たちがね……」というお決まりの会話をすると、ふたりは動物の赤ちゃんのような目できらきらとこちらを見ていた。2件目、金曜なのでなじみのお店をあたっても満席で、ふらふら歩きどん底に入ろうとすると、ゆうくんと阿久津さんが屋外の席にいて、声をかけても届かないので、こちらに背を向けていた阿久津さんの肩に手をおき、やあ、っと声をかけて、東京っぽーい!とはしゃぐ。
どん底は思っていたよりバー利用できた。中二階みたいなちいさな席に通されて、メニューを見ながら「ここはむかし、三島由紀夫がね……」とお決まりの会話をした。
4月20日(土)
イオ→じゅんちゃんへと渡った風邪が、やってきた。熱は高くないものの、すごくしんどい。顔が痛い。葛根湯と睡眠だけが頼り。昼寝が苦手なのに、1日中眠れていた。
4月21日(日)
熱のつづき。1日中ねていた。夜、すこしだけマシになって、なぜか『望郷太郎』を読む。よくできている。多分ドラマ『フォールアウト』の影響で読みたくなった。