6月10日(月)
午前イオのお世話をしたのち、出。はたさんの事務所まで行って、打ち合わせ。東京東側に出るのはちょっとした旅の気持ちで、色々散歩したいなと思っていたけれど、いつのまにか時間がなくなっていた。駅を出て地上にあがると、まっすぐな道。そうだ、この平坦さが東東京だ、とうれしくなる。事務所は小さなビルの中の白くてきれいな部屋。東京東側、職人が使っていたり小さな工場(こうば)が入っていたり、昭和のこじんまりとしたビルが多くて、それは生活を感じさせるものだから好きだ。
3時間弱、たっぷり話す。フェミニズムのこと、ボーイズクラブの実態についてなどなど。はたさんは昨日『マッドマックス:フュリオサ』を見てきたらしい。感想を聞いていたら見たくなってきた。前作、というか、マッドマックスシリーズと相性が悪く、フューリーロードも最後まで見れていない。そこからか。
6月11日(火)
起きたら久々のうつ。イオの出かける用意だけして、じゅんちゃんに託す。つらいつらいつらい。生きていても意味がなく、自分はあらゆる能力が皆無で、今にもみんなから見放される。それに貯金ももうなくなって、路頭に迷う。そういう毎度おなじみの自己否定からの貧困妄想のコンボにやられる。それで動けない。あまりに急な体調変化だから、その理由を探そうとして「これは病気ではなく怠惰なんだ」と思い込み、それを納得できる理由とすることでさらに自己否定を続ける。母に電話。「それは病気です。症状です。」とのことで、そっか、とすこし落ち着いた。
せっかくうつなので、マッドマックスを見たらいいと思ってフューリーロード(怒りのデスロードって邦題はきらいだ)をつける。たぶん40分くらいまでは見たことがある。最初から見て、途中で寝かけ、1時間ちょっとあたりで切った。やっぱり向いていないようだった。
イオのおむかえ、お風呂、離乳食、ミルク。お腹の調子も整ってきて、離乳食をばくばく食べてくれるのでうれしい。最近、目をほそめて破顔して、絵文字みたいにイオは笑う。とてもかわいい。
夜、すこし元気が出てくる。じゅんちゃんに「なんで今回うつになっちゃったんだろう?」と聞くと、「BURUTUSがんばったのあると思うよ。なんか憑依してたよ」といわれ「なんだろ。雑誌編集者の魂かな?」というと、「それそれ~」とのこと。
「君は毎回全力を尽くしちゃうんだよね。雑誌のライターなら、ある程度流さないとだめだよ。作品じゃないんだもの」といわれ、それはその通りだ、と思う。
6月12日(水)
朝 全粒粉の食パンでピザトースト
昼 日高屋 とんこつラーメンと餃子
夜 玄米、残りのレバニラとエビチリ みそ汁
だいぶ回復傾向。午前にNotionであたらしい本の目次をつくる。いったん形にするために、章ごとの基本構造をつくり、それをモジュール化してつなげ、ぜんたいとした。こうしないとぜんたいはイメージできないが、モジュールなので、なんだか退屈な建売住宅が並んだ分譲地に見えてくる。
たかくらに相談。構造つくるか手を動かすか。テーマは作家が決め、構造は編集者が決めたらいい、とのこと。いろいろヒントをもらってやる気になり、Notionに作業ログのページをつくって、LINEのスクショを張った。この本でやりたいこと、テーマも書いた。ログを埋めたいので、毎日この本に関わるなにかの作業をしたくなりそう。
ぐったり来たので横になって、柴崎友香さん『あらゆることは今起こる』と赤坂真理さん『安全に狂う方法』を読む。後者は昨日届いて、まるでうつになる用意をしていたみたい。
最近家の中のものがちょうど壊れてくる。今日は脱衣所の電気が切れたので、駅前で買う。そのままカフェで明日の授業の準備。イオのお迎え。散歩がてらうろうろして帰ると、ベビーサークルに置いたらそのまま寝てしまう。まだ17時すぎだ。起こしてお風呂に入れて、ミルク、離乳食と進みたいが、あまりに気持ちよさそうなので、そのまましばらく寝かせることに。
その隙に自分の食事をとって、20時くらいに起こして一連の夜のやることをやる。離乳食、今日はおかゆ大さじ2、鳥と野菜のベビーフード大さじ1、リンゴのジュレ大さじ1とたくさん食べた。おかゆは味気なさそうなので、赤ちゃん用のかつおだしですこし伸ばしたらもりもり食べる。胃腸炎で2週以上苦しんだので、どんどん食べて太ったらいい。
6月21日(金)
朝5時にじゅんちゃんとバトンタッチして寝、9時半ごろ起きるとまた体調がおかしい。そのまま何も出来ず、昼なんとかはい出して実家からの贈りものに入ってた岐阜タンメンをつくる。いったいなんで調子がおかしいのかわからず、色々探偵のように見聞してくと、昨日くらいに読んだあるテキストにひどく傷ついたようだった。
どれだけ気をつけていても、心がいつもむき出しなので、ちょっとしたことでひどく傷ついてしまう。その反面、大いに感動できることもあるのだけど、この振れ幅がトレードオフなのはけっこうしんどい。「精神看護」の白石さんおつかれ特集をひらいて、かれがこれまでつくってきた本たちを振り返るテキストを読んでいると、すこし落ち着く同時に、さっきまで完全に消えてしまったと思った創作の火が、またふたたび小さく灯り始める予感がする。うつは、この世界への絶望と同時に、小さな反逆の火を灯す。
そのまま栗原康さん『超人ナイチンゲール』を読み、坂口恭平さんの躁鬱日記を探すも見当たらず、かわりに『躁鬱大学』を読み、さいごに北尾修一さん『自分思い上がってました日記』を読む。
6月22日(土)
4時過ぎにイオの声で目が覚めるも、じゅんちゃんが対応してくれているので寝。
6時起き。ふたりとも寝ている。ピヨログを見ると、ミルクだけあげたようだ。
朝ごはんにシュークリームとおいものパン。水出しのアイスコーヒーがすこしだけ残っていたので、それを水で割って飲みながら、北尾修一さん『自分思い上がってました日記』の続きを全部読む。体調が悪いときには体調が悪いひとの日記がはまるけど、この本で書かれている術前の北尾さんの生活はエネルギッシュ。食事の量も酒量も多くて、すこし心配になる。すごいバイタリティ。いまの自分はやっぱり「編集者」は出来ないなーと思う。
午後、ブックオフディグ。手元にあるはずなのに見当たらない、柴崎友香さん『きょうのできごと』と、セルバンテス『ドン・キホーテ』の上巻のサルベージに成功。
夜、作業をしてるじゅんちゃんの部屋に妙に好きな音楽がかかっていて、シャズムをしたらHammockの「Clarity」だった。どこで聞いたのだっけ。じゅんちゃんは、坂本美雨さんのラジオか何かで聞いたとのこと。
6月23日(日)
金曜日、園の大きな子たちはじゃがいも堀り遠足というのに行ってきたらしく(楽しそう)、園にいただけのイオもちいさなじゃがいもを5個ほどもらってきた。これは離乳食にするのが道理だろうと思って、けれど時間はあまりなく、冷蔵庫の中にあったピーマンと鳥肉を5ミリくらいの角切りにして、赤ちゃん用のコンソメで煮てみた。
ぺろっと味見をしたらベビーフードよりちゃんと素材の味がしておいしく感じ、自信満々出だしたら、ひとくち食べると声をあげて怒ってまったく食べない。かわりにベビーフードのまぐろのおかゆのようなのを出すと、よろこんで完食。資本主義の洗礼を浴びる。あるあるなやつだと聞いていたから、ガードはとれていたはずなのに、カウンターを食らったように、どーんとつらい。つらくてTwitterとThreadsに嘆きを書く。
大人のばんごはんは、イナダさんレシピの「ザ・シチュー」。豚の脂のすくないブロックが見当たらなくスペアリブで試したが、これはあぶらっこすぎ。スペアリブは焼いてあぶらを落とさなきゃ、もうぼくらの年齢ではトゥーマッチであることを知る。