武田俊

2021.1.28

これまでの個人的なClubhouse体験記

この数日で一気に国内ユーザーが増えた音声SNS・Clubhouse。招待制となっているため、日々国内のユーザー層が変化しそれにともなってメディア体験も変わることが予想されるので、断片的かつ個人的な体験をまとめておくエントリとして記します。随時更新するかも。

2020年4月

海外メディア経由でサービス名を知る。ふうん、と思いつつ緊急事態宣言もろもろでそこまで情報を追いかけないまま見送っていた。

2020年5月

RSSに登録していたことから、TechCrunchのこの記事で合計1200万ドルの調達から、時価総額1億ドルとなったことを知る。触ってないのでわからなかったが、コミュニティドリブン型の新生音声SNSで、TwitterやHousepartyからのリプレイスが目立つ、という指摘をふんふんと読む。

上の記事は今読み直してみると、現在の国内利用者の動きと重なる部分もけっこうあるように思う。

2021年1月24日

シリーズBラウンドの調達ニュースが報じられる。今回の調達資金はクリエイター助成プログラムにも使われるということがキーになったのか、国内のスタートアップ界隈で話題になっているのをTwitterなどで発見。

2021年1月25日

仕事で関わるチームのSlackで「なんでClubhouse、急に話題になったんでしょうね」なんて話す。まだぼくのもとにインビテーションはこない。

2021年1月27日

妻のもとにインビテーションが届き、2枠のうち一つを分けてもらい早速ログイン。アイコンが正方形の角丸などがユニークかつ印象的。いくつかのルームを回ってみる。サービス体験としての新しさは感じない。すでにdiscordなどで体験しているものの変奏といった印象。でもリードで書いたようにユーザー層の変異に合わせて感覚が変わるため、しばらく使うことにしてみる。

オフィスで偶然ばったり、あるいは喫煙所コミュニケーション

・国内では変わらずITスタートアップ、ファンド関係の人が目立つ
・しかしそこでは「メディア」としての議論というより、マネタイズや企業価値、今後のスケールに必要なものとはといったビジネス的観点からの話題がほとんど。
・同時に使い方を試す「ゆるく雑談」「とりあえず練習」といったものも出始める。
・次第に「作業用。タイプ音以外NG」といったハードコアなものも散見されだす。

サンフランシスコで暮らす灰色ハイジさんが妻とルームをつくっておしゃべりし始めたので、参加させてもらいサービス体験について談話。テキストチャットが一切ないことで、オンラインの知り合いにとりあえず話しかけるということがしやすい。

クローズドでルームを作っておしゃべりするのは、喫煙所コミュニケーションに近いのではと話す。予定をあわせたわけではないけど、社内ですれ違って近況を話したり、というような。コロナでリモートワークが一般化したことで失われたのが「雑談」なわけで、案外この「スキマ時間の会話欲」に支えられているサービスなのかもしれない。

夕方あたりから明言はしないが、バズ界隈やオンラインサロン的な人たちの「セミナーの入り口」らしきルームがいくつか出現してきた。まあそうなるよね、と思う。現状マネタイズの導線がないからそこまでえげつない話になってはいないが、まあ時間の問題だろう。

そんな様子を妻は「におわせカンバセーション」と評していて笑った。
「俺たちの仲間になると得するよ。聞いてもらってもかまわないよ?」ってメタメッセージがぷんぷん匂い立っている。

しかしこのアイコンは誰なんだろうと思っていると、Twitterでこんなポストを発見。

調べてみるとなんでもコミュニティをドライブさせたユーザーアイコンが、そのままアプリアイコンに採用されているという! こんな方法は今までなかったんじゃないだろうか。とてもおもしろい、が、ユーザーとして使いにくそう、という気も。

夜、TBS、ニッポン放送、Radiotalkの方々がClubhouseを評しているルームを発見して聞く。こういう語りがさらっと聞けるのはいい。あとにログが残らないこと、スタートさせるまでのコストが徹底して低いことは重要だ。

既存の国内音声メディア・アプリとの違いを考えると、それらはラジオ番組を参照したpodcastをさらに参照したもので、言ってみれば誰でも簡単にpodcastっぽいものをケータイでつくって配信までできるよ、といった向きだった。

Clubhouseはログを残さず、出会い頭での会話をコミュニティに結びつけている。
ならばコミュニティがどう醸成されていくかにかかるのだろう。現状国内ではスタートアップ界隈のほか目立ったコミュニティは見当たらず。

1月28日

招待枠がなくても「招待」が可能

カレンダーのアイコンから、いくつか気になるルームを発見。タップするとそのままGoogle Calendarに登録できるのはとてもいい。

タイムライン(という呼び方でいいのだろうか)は、相変わらずITスタートアップ関連が多い。インターネット老人会だな、と評している人もいて現状自分のTLもそれに近い。ので、最初にTwitterを触った2007年あたりを思い出して、フォローの数を増やして世界の解像度を上げることにする。

昨日Twitterで触った感想を書いたからか、「招待してください!」ってメッセージが結構届く。バンドワゴン効果を感じる。招待枠が2つなのは少ないなと思っていると、枠がなくてもお招きする手段に気がつく。

あらかじめ電話番号を連絡帳に登録している相手がClubhouseのアカウント登録申請を行っていると、既存ユーザーの方に通知がある。そこで「Let them in!」をタップすればそれでオーケー。通知がいくつか飛んできたので気づいた。この方法で4名くらい招きいれる。

海外ユーザのルームをのぞくと、フォトグラファーとモデルと映像関係者がカジュアルにでも世相と絡めて自分たちの業界の行く末を真剣なムードで話していたり、その他にもソーシャルイシューについて語り合っている様子が見られた。コミュニティドリブン。日本もこういうふうに果たしてなるだろうか。

 

非スタートアップのルームが見えてきた

先週末に国内のスタートアップ界隈に招待が出回ったとすると、そこから2段くらい落ちたあたりでその他のメディアやカルチャー系の人たちに伝播しはじめるわけで、それがおそらく昨日今日なのだろうと思っていたら、やはりそのようだった。

編集者が著者と話したり、編集者同士で近況報告をしあったり。そんな中でアーティストとしてルームを開いていたのがROTH BART BARONの三船くんだったのは、個人的には感慨深いものがあった。新しいツールはまず赤ちゃんが物を口に入れるように、使ってみて判断するのがいい。一番ピュアな状態で、身体感覚で触れることの重要さを感じる。

けんすうさんに対して公開取材をしているルームも見つけて、こういう使い方──つまりこれまでの仕事のあり方に少し付け足すようにClubhouseを噛ませてみる──がしばらく増えそうだなと思う。

デザイン、編集、カルチャー、アートに関連したプレイヤーがもっと増えないとと思うので、そういう人の参加要望通知が来たら積極的に「Let them in!」をタップしていこう。