武田俊

2021.5.26

空中日記 #49|冷やし中華とマヨネーズ

5月18日(月)

復活の気持ち。8時起床、ヨーグルトと有機シリアル。これ、ヨーグルトにプロテイン混ぜ込めばエネルギーもタンパク質もとれてよくない? と食べ終わったから思う。9時からひたすら作業、企画書、依頼、タスク整理の繰り返し。ポモドーロ回し忘れる。

お昼、冷やし中華。地元の人たちはマヨネーズをかけるわけだけど、ぼくはタレの水分とマヨネーズが分離して汚いマーブリングみたいになるのがいやでかけてこなかった。でも東京に出てから「名古屋の人は冷やし中華にマヨネーズかけるんだよ〜」「え〜きもちわるい」っていうやりとりをするためにかけていたら、これがけっこう好きになってしまったのだった。

午後はがっつりめのMTGを2本。話すことで力を借りて、身体にしみついていたいやなかんじが解けていって、それで社会と対面するために使っている輪郭のようなものが、やっと表面に現れてきた感じがする。

MTG終わって駅前へ。いつもの魚屋さんで見慣れない、大きな、赤い、紡錘形の魚が並んでいる。ハチビキというもので、スズキの仲間。白身魚なのに身は赤いのだという(白身とは?)。60センチ越えている魚体で、980円。ちょっとこわい。鮮度は問題なさそうなので、刺し身で、皮霜造りで。味は、普通……。明日は焼いてみようかな。

先週のカオパックンのお店

夜、オンプラ。久々にカメラ持っていく。スタジオのそばにガラスに貼られたフィルムがとてもいい質感のビルがあって、そこへの映り込みの何枚か撮影する。メッセージテーマは「梅雨のそなえ」で、石田千『箸もてば』をセレクトした。千さんの本を読んでいると、町に旅立ちたくなる。いつも過ごす町が、特別なものたちでできたかけがえのないものに見える。雑踏、赤ちょうちん、その下での会話。あるいは、自宅のキッチン。厚揚げひとつとっても、ごちそうで、その文章で味わう厚揚げは、じっさいのそれよりはるかにおいしい。

ゲストはYUMA HARAさん。おしゃべり上手で声もすてきな方で、もっと話していたくなる。もっと話していたくなる時間が、すべてぼくを支援する。ゲストの時間の20分は、2.3日ぶんのエネルギーが湧いてくるような気がする時間だ。これまでの研鑽と経験のために過ごした時間が、そのいっとき対話のためにひらかれる。それで終わったあとどっと疲れる。

それまでずっとミキサーをしてくれていた小平さんが先週と今日と代打で来ていて、彼女のスタジオにいる風景──アクリルごしに押くんと小平さんが並んでいて、スタジオの中のぼくを見ていたり、時たまCM中でのおしゃべりですてきにケラケラ笑ったり、休憩のあいだにおやつをつまんで最近Youtubeでみたライブ映像なんかをシェアしたり、オンエアが終わったあとふたりで喫煙所で生活にまつわる色んな話をしたり──っていうのは、初めてのラジオパーソナリティの仕事におっかなびっくり毎週過ごしていた3年前の日々が断片的に思い出されて、それは懐かしいっていうよりも、心地よい感覚だった。ぼくたちがつくってきた3年間の時間があって、その先に今日があり、今日みたいな代打があると、またいつでもはじまりの時間の中に戻れるっていうこと。それがうれしいのはなんでだろう。と思いながら、帰った。

家につくまえに玉川上水の水面に、初夏の緑が朝焼けに乱反射する、そういう写真を撮ろうと思ってがんばったけど、全然うまくいかなくて笑った。

 

5月18日(火)

11時起床。コンビニでみつけて買っていた、どん兵衛がソース味に、みたいなのを食べる。おいしくはない。おいしくないだろうから食べてみたい、ってものがあって、食べものなのにプラスティックでキッチュで、その頭の悪い感じがチャーミングでその意味でインスタント食品が好き。

UFC262の見れてない試合を見る。トニー・ファーガソンが負けてしまったのがやっぱり悲しくて、もう彼のピークは過ぎてしまったのかもしれなかった。代理戦争、と思って『UFC4』をプレイ。もちろんトニーで、野良の人たちと対戦する。中距離なら左ローをステップインで放ち、その勢いで右ストレート、あるいは時たまオーバーハンド。それで距離を詰めたら、ミドルに膝、さらにショートレンジになったら彼のお得意のエルボー。それでダウンをかせいでいった。上級者とあたったときには、距離を離し、たまに今成ロールをしかけて、そのまま足関節を狙う。万一返されてしまっても、かれは下からのチョークのバリエーションが豊富だから、その時々の体勢で、フロントチョーク、アナコンダチョークなどで極める。ゲームの中のトニーは強くって、それでなんだか泣けてきてしまう。

じゅんこ、クタクタで帰ってきたけど、なんだか気持ちよさそうにして、買ってきた中華のおかずを食べていた。ドラゴンズはチラ見して、結局勝ったみたいだった。いつもドラゴンズはぼくが真剣に見ていないと勝つ。

自室で作業。ANKERのドッキングステーションが届いたので設置。これでデスク周りが一旦一段落した。とてもいい気分。作業しつつ、あいまにゲーミングPCをまた調べてしまう。迷ってるなら買えばいいと思う。それで買おうと思った。ALIENWAREではなく、OMENのタワー。必要な仕様をまとめると、30万くらいになった。30万を切れば、一括償却資産だなあと思う。

Macだけがコンピューター、みたいに思っているある種の人種が嫌いで、でも気づけばぼくのデバイスはApple製品だらけになっている。単純な強さ、早さがほしい。そしてコンシューマーに落ちてこなかったり、あるいは時間をかけて落ちてくるその前の、ワイルドな気分でつくられた様々なゲームに作品として触れたい。今期の目玉経費の対象を、やっぱ新しいマシンにしようと思う。

じゅんこに相談したら止められるかな、と思ったら
「赤塚不二夫も新しいメディアやデバイスなんでも触ってたんだから、いいんじゃない?」
と言われる。すごいなあ。さすがほしいものはほしい時に買うべし、の人。

いいゴルフがいた

5月21日(金)

朝からひたすら取材の仕込み。
並行して小刻みにいくつかの企画を進めていると、たとえばAの依頼をしたあと、Bの企画書を整え依頼、続いてCの企画書を整えていると早くもBの方からご快諾の旨が届いたから日程を詰めていくと、さらにAの方からもご快諾で日程を……。でCの依頼を進めようとすると、今度はBの方の取材日程がFIXするから、それを編集部にシェアしつつフォトグラファーに連絡をして、改めて企画の趣旨と条件を伝え……。っていうのをやってたら夕方になってた。上の例では3件だが、これがプロジェクトをまたぐと合計で10個くらい直近で回していて、そうするとこうなるようだ。

怪獣や恐竜っぽいものは全部好き

夕方、授業。
前期の醍醐味のインタビューWSがリモートになってしまって悲しいけれど、これはこれでやりようでもある。25名ほどの学生をグループごとにブレイクアウトルームにわけ、そこでワークを進めてもらう。机間巡回がうまくできないのだけが、難点のような気がする。ワークをみっちり組んでいるのであまりしゃべる時間がとれずものたりない気持ち。

夜、予定をごめんなさいして、帰宅したじゅんこと晩ごはん。
ハチビキの残りを、なんとかマシな形で食べようと思って、ホイル焼きにしてみる。
アルミホイルの中に皮付きの身を起き、バター、にんにく、新玉ねぎで閉じて焼く。きのこがあればよかったのに。レモンバターソースみたいくしたかったけどレモンも柑橘類もなかったので、焼けたあとにポン酢をほんの少し回した。そこそこ、という感じ。

夜、執筆。
どこかで挟み込みたいシーンを、断章的に書いてみた。
あとはプロジェクト自体に関するテキストをいくつか。
早く読んでもらえる体勢を整えていきたい!

 

5月22日(土)

雨。9時半起き、パン。
じゅんこ4時起きで作業をしていた様子。なんだかつらそうにしているので話を聞く。
共同制作(というか、ぼくはほぼお手伝いだが)の作品についての作業で、ぼくの方が認知能力的に得意そうなものがあったので、アシストする。動画を走らせながらテキストをつけていくのだけど、M1ではないぼくのMacBook Airでは遅延がひどく、PCを交換して作業。自分のものではないマシンは使いづらい。

昼、冷蔵庫にあった魚肉ソーセージと長ねぎだけを使ったチャーハン。鶏ガラスープではなく、ほたての顆粒を使ったのがうまくハマる。余ってしなしなになっていたパクチーもいれた。こういう、どうでもよさそうなだるっとした土曜のお昼ごはんが好きだ。昔、まだ世界に半ドンというものがあった時代に、学校から帰った土曜につくってくれた焼きそばを思い出す。まるちゃんの麺で、なぜか必ずピーマンとちくわと炒り卵が入っていた焼きそば。

午後、引き続きかわりに作業。
途中でくたびれて、自分の執筆に入る。本のプロジェクトはだいぶ進んでいる。今日の推敲は3章。保坂和志再読月間のおかげで、自分の文体や小説に対しての意識が新しい領域に入ってきているのがわかるんだけど、でも目の前にあるのは数ヶ月前に起筆した原稿なわけで、なんか前に戻ってきちゃってる気がする。早く終わらせて新しい章を起筆したい。
あいまに、エイヤっとゲーミングPCを決済。最終的にOMENの30Lのミニタワーを選んだ。
i7、3080X、SSDに1G、HDに2G、メモリは32G積んでこれである程度の期間使い倒せるマシンになっていると思うとワクワクする。一括償却できるギリギリの予算で調整してみた。

夜、ハンバーグをつくる。
前にどこかで食べためのすごく粗挽きのパティがおいしかったハンバーガーを思い出し、そんなのにしようと大きな牛肉のブロックを買ってきて、それを出刃包丁で叩いていく。ハンドブレンダーを使ってもよかったのだけど、粒度を手で調整したかったのだ。豚こまも叩いて、あらい合い挽きをつくったらバトンタッチ。もう今日は料理したくないので、じゅんこにまかせる。とってもおいしいのができた。

夜、執筆。
wordが嫌いすぎるので、やむなくpagesでやってみる。だいぶまし。macのwordはレイアウトはずたずただし、アプリもおもすぎるし、ほんとうにひどい!
3章半分まで。明日でケリをつけて、新しいパートに入りたい。
保坂和志『小説の自由』、桐野夏生『顔に降りかかる雨』。

こういう物を見つけると心が動き出すようだ

 

5月23日(日)

耳が沸いてから休んでいたけど、満を持して柔術に復帰。3週間弱空いてしまって身体がなかなか動かなかったけれど、やはり楽しい。スパーを4R。しばらくお会いしてない人たちだから、元来の引っ込み思案が出てしまって笑える。

帰宅して、天津飯、プロテイン。全身から汗が抜けきっているから、肌がさらさらとしていて、それを風がなでてとっても気持ちが良い。子どもの頃のプール帰りの時のような懐かしい倦怠感が身体を包んでいて、いつでも眠る事ができそうだけど、この心地よさと懐かしさをできるだけ味わい続けていたいから、お昼寝をすることはやめた。コンビニ行って普段は買わないクーリッシュ。夏のきもち。

夕方じゅんこ帰宅。彼女にしてはめずらしく、具体的に食べたいものがあるみたいで、それが「なんかカジキみたいなののソテーが食べたい!」というので一緒に買い物に。メカジキの腹身がとてもおいしそうだったので、買い、ガーリックステーキに。サラダは最近我が家で流行りはじめたチョップドサラダ。せっかくブラウンのパワフルなハンドブレンダーがあるから、これを使うべし、ということで最近毎日食べている。ぼくはサラダをつくるのが楽しくないので、これはじゅんこの仕事。今日はキウイが入っていた。

夜、おださんとたかくらとモンハン。ぼくが一番下手っぴ。1時間やって、小田さんは「ちょっとこのあとプロハンたちと約束あってな、わりい!」と行ってプロの世界に旅立っていった。入れ替わりで多田ちゃんが登場。小中高の同級生とたかくらが仲良くしているのがとてもうれしい。ロビーで次に何狩る? と言いながら、最近の仕事や、制作時間をどう確保しているか、最近みた映画の話なんかをする時、やっぱりこれは飲み会だなあと思う。

寝る前、保坂和志『小説の自由』。

散歩の帰り道、モネみたいな雲