武田俊

2022.6.8

空中日記 #72

6月6日(月)

7時に目が覚めて起き上がるも、どんよりと体が重たい。怒涛の先週からの疲れもあるし、久々にしっかり雨が降っている。すると、朝ごはんを食べ終わるや否や『UFC4』をプレイしていた。最近やっとわかったけど、セロトニンが不足している時にドーパミンやアドレナリンでそれを補おうとするかのようにぼくはこのゲームをプレイしたがる。

歴代のUFCのトップファイターを扱えたり、頻繁なアップデートにより最新の選手データが搭載されたり、日替わりのデイリーチャレンジがあったりと飽きさせない工夫に富んでいるのがこのゲームだけれど、もっともぼくを惹きつけているのはサウンドの効果だと思う。通常時ならボコって感じの打撃が、カウンターできまるとボギっっとまるで肉の奥の骨が軋むような音に変わる。サブミッションの場合、極まる寸前まで行くと画面が赤黒く明滅し、もう後がないぞと焦らせることを意図して作られたれた複雑なアラート音のようなものが徐々に大きくなっていく。緊張と緩和。ドラッグとしての格闘技。

11時からあさとくんとMTG。新プロジェクトのキックオフだから対面で、と約束していたけどあまりの雨なのでオフライン。けれどオフラインのいいところはたくさんあって、そのひとつがあまり人は言わないけれどその場でたくさん資料をシェアできるところだと思う。それはフィジカル/デジタル両方で、自室にある資料を見せながらそのAmazonのURLを送ることもできるし、Web記事もさくっとシェアできる。対面でもできるよね、と思うけれど、対面のときは心の深度を合わせることを重視してしまうのでこういったことまで自然にやり切れない気がする。

夜、冷凍していたタイガートラウトをスパイスカレーに。スパイスカレーを今一度、ちゃんと計量しながらつくりたいと思う。少なくとも自分でつくりはじめた5年くらい前はそうしていた。けっこう慎重な手つきで測って、それぞれのスパイスがどのくらいの量でどのくらいの効果を発揮するのか知ろうとしていた。それがいつからか感覚である程度味を狙えるようになり目分量になったけど、最近は扱うスパイスの種類が増えたので目分量というより適当になってしまっていて、だから毎回2度と再開できない魔法のカレーが出来上がる。

そのブラックボックス的魔術的調理の楽しみはもちろんあって、でもそれは偶然に期待した刹那的なものだ。計量を望む心は、偶然ではない確定した未来をもとめたいという気持ち。そう言葉にするとえらく保守的な感覚に思えてしまうのだけど、こうしたらどうだろう? 過去の発明を思い出しそれを再現することで自分の研鑽と現在地を(未来のために)再確認する行為、だと。そう思えばそれはけっして悪くないことだし、何より明日も生活が続く、ということの確らしさを自分に伝えられるような気がする。それは今のぼくに、とても必要なことな気がする。