武田俊

2022.8.23

空中日記 #80 カツ丼とスズメバチ

7月31日(日)

今日はUFC277とRIZIN37、つまりナンバリングタイトルが重なっていて忙しい日。
本当は自分の柔術に行って、UFCは録画で、RIZINはまあオンタイムで見ようと思っていたけど、前者のメインカードがどれもこれもいいカードなのでなし崩し的に全部家でみることにした。ジムが家から近いってことが、思っていたよりも重要なことらしいのに最近身を持って感じてる。UFCはモレノがカイ・カラ・フランスにボディをがっつり効かせてTKOで勝って、自分が想像していたよりもはるかにうれしい気持ちになった。たくさんのフェイントを入れながら、でも中盤、不意にいくつかいいのをもらいながら、最後はしっかりしめる。それであのくしゃくしゃの笑顔がまた見れた。自分のことじゃないのに、報われたような気持ち。

RIZINは、出場選手のケガやコロナでたくさんカードが混乱したけど、でもけっこう楽しめた大会だったんじゃないかな? ずっとぐったり休んでいたじゅんちゃんが、所英男VS神龍誠戦のときになぜか観に来ていて、簡単な説明にもかかわらずこのカードのストーリーと見どころを理解してておもしろかった。さすが今成さんの試合を楽しめる素質のある人物。

夜、めんどうなので気に入りのお蕎麦屋さんからカツ丼と親子丼を頼む。気に入ってるのに蕎麦を頼まないのがなんだかぜいたくな気持ちでゆかい。でもカツ丼は、やっぱお店で食べるのがおいしいと思う。

 

8月1日(月)

横田さんと山梨県某所で釣り。
最寄りのコンビニで遊魚券(河川で釣りをするときはこれを買うのです。収益は管轄の漁協に入り、河川整備や放流のために使われる)を買う。そこに書かれた日付を見て、ああもう8月かと思ってレジのおばちゃんに「わあ、もう8月だ。早いですねえ」と話すと「……そですね」とつれない返事でしょんぼりする。今つれない返事をもらったことでこのあと釣れるぞ、と自分をはげました。

ポイントは以前に横田さんがソロで行ったことがあるというところで、ぼく初。とてもきれいな渓流。気温は10時半とちょっと遅めの入渓時点でで30℃を越えていたけれど、水温は16℃でいい感じ。底面が部分的に砂地になっていて、これは土砂でも以前に流れたんだろうか。でもそのせいで、反射した太陽光がきれいで明るい渓だ。目には楽しいけど、これが釣りに適しているのかは知識が足りないぼくにはわからない。

開始時点で横田さんが23センチくらいのイワナを早々に釣り上げててうらやましい。今日は新しく買ったロッドを初めて使った。固くてミノーイングに適してるってやつで、スミスのラグレスボロンってやつ。ぼくにしてはめずらしく高級な道具を買ったのだけど、最初その張りの強さに慣れずキャスティングが安定しない。ちょっとずつ釣り上がって慣れてきたころ、二手に河がわかれてるところの淵でちいさなイワナを1匹キャッチできた。うれしくて横田さんに見せたい。けど、二手にわかれてるから見せられないジレンマ。弱らせたくないので写真をぱっと一枚撮って、ありがとね、と声をかけてリリースした。

クライマックスは中盤、奥に広がった淵。めっちゃよさそうなポイントなんだけど、上から枯れ枝がオーバーハングのように垂れ下がってて、キャスティングがむずかしい。ミスったらもうイワナは逃げちゃうので、一発で決めたい。たのむぞ…と思ってスリークォーターからサイド気味で投げたぼくのDコンタクトは、狙った通りの枝と枝の隙間をすべり込むようにして入っていった。いいぞ!と思ってリーリングしていると、まるまるとしたイワナが手前まで追ってきた。けれど、バイトまで至らない。むむむ。もう一度チャンスはないか、と思った2投目、またしてもベストな場所にルアーを飛ばせるとそこに強烈にひったくるようなアタリ。イワナが反転して、猛烈な引きがやってきた。半端にあわせていたドラグがシャーっとなってて、ごく短時間ファイトするもこれじゃ引き寄せられないと思ってドラグをがっと締めてしまう。これが大失敗。あわててそのままロッドを立てていたら、イワナは大きくジャンプして、そのタイミングでバラしてしまった……。んなあああああああ!と声が出た。

そのあともいい型のイワナを1匹バラしてしまう。
どうも硬いロッドの扱いになれてないのが、如実に影響として出てしまった。
釣り上がっていくといくつか堰堤が出てきて、そのひとつを高まきして越えようとしたところ、先行してた横田さんが「なんか、アブにやられたかも」とこっちを振り返る。「まじっすか、大丈夫すか」と声をかけると「や、だめだこれは、巣がある」と言って戻ってきた。見ると、黄色い虫が数匹飛び回っている。スズメバチだ……まずい……。急いでポイズンリムーバーで毒を吸い取る。しんぱい。大事をとって退渓して、病院を探すもお昼時で近くのところはやってない。幸いひどいことにはなってなさそうなので、帰路についてPAでめっちゃ硬い吉田うどんっていうのを食べて解散。

帰宅してポイズンリムーバーをすぐにポチって、ひとり反省会した。じわじわと大きなイワナをキャッチできなかったくやしさがふくらんでくる。なにがいけなかったのかは明確だから、はやくリベンジをしたい。硬いロッド、伸びないPEラインとフロロカーボンのリーダーって今日の組み合わせは、すっごく敏感に水中の情報を伝えてくれるし、タイムラグなく手元のアクションをルアーに伝えてくれる。でもそれって、魚の側からもこちらの動きの情報がダイレクトに伝わっているってことだと思い当たる。ぼくがあせってドラグをきつくしめたことも、あわててロッドを立てたことで上に引っ張られる感覚もダイレクトに彼らの顎にフックした針を通して伝わっている。だからかれは、その動きにいさましく追従するようにして水面上にジャンプして針を外してしまったというわけなんだろう。その先を、その先をイメージすること。
自分が魚に伝える、その情報をあらかじめ予想したその先に、たぶん今日の釣果がきっとあったのだ。

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