武田俊

2022.12.12

空中日記 #81|もりあがる、もりあがる川柳

12月2日(金)

8時起き。スクランブルエッグがいい塩梅にできた。アイリッシュシチューの残りをあたためて、白いやわらかい食パンを皿に盛り、剛くんのピーナッツバターを3種類ダイニングテーブルに並べたら、なんだか豪華な朝ごはんができた。

のに、じゅんちゃんの昨日の続きのような言い合いをしてしまう。自分が真剣に放ったことばを大切に受け取ってもらえてない、と感じると、親しい仲だとぼくは烈火のごとく怒ってしまう。それをやめたいのに、昨日までうつっぽかった脳は、反比例するみたいにぐわんと加速してことばが止まらない。

青の輪郭のミーティングして、ごとうさんとここからの流れを再度確認しあう。私小説的な書き味を獲得できた反面、ここまでの高校生篇に紙幅を費やしすぎ。3年間で9万字書いてしまい、次回、高校生をスキップして、何なら界遊の創刊までスキップして書くのはどうか、という案が出る。とりあえず3章を2話で終わらせて、そのあとのことについては内沼さんと相談という流れ。

情報メディア演習、今日はかなめさんがゲスト。編集者を経て代理店にいったキャリアの、いい感じのバイブスの秘密がわかったきもち。話を聞いていると、自分は広告、の中でもPRの世界だったらけっこう楽しく活躍できたんじゃないかと思ってしまう。多数のメディアを見下ろした上でのメタ視点での編集っぽいしごと。

授業おわり、ごちそう飲み1件目は伊勢藤さん。日本酒、それも一銘柄しかなく、かつアテは全部値段も書いてないもの、という感じだけど、おじさんもおばさんもめちゃ腰が低くやさしくて、すごくいい時間を過ごさせてもらう。17時オープン20時半クローズというのもすばらしい。また来たい。鯛わたの塩辛(つまり和製チャンジャ)が永久に飲めるいいおあじだった。

2軒目は伊太八。むかーしからあるラーメン屋さんらしいが、2Fが御座敷になっててそこで飲める。完全にひとんちのスタイル。かなめさんはテレビが見たくてつけた。最初だれもいなかったのに、2時間近くしたら2Fも満席に。餃子、下味強めでおいしい。久々に他人とがやがやな空間でちょっと拒否感が出たものの、すぐに慣れて楽しくなった。かなめさんが「久々に雑多な感じで楽しかったねー」と言っていたからだと思う。同行者が楽しそうなら、ぼくは楽しくなれるようだ。

 

12月3日(土)

大災害のような発作的なけんかをしてしまい、ふたりともぐったり。ぜったいそういうことはない方がいいのだけど、しかしそういう時でないと出てこないことばがある。お互いに傷つけあいながら、でも普段出てこないことばを交わしたあと、仲直りができると、世界がとてもうつくしく見える。当たり前に見過ごしてきた雲の変化だとか、光の差し込み方だとか、その光であたたまってきた部屋の空気だとか、そういうものをこれ以上なく愛おしく思える。

 

12月4日(日)

じゅんちゃん朝から展示搬入のために六本木へ。ぼくはUFCをダラダラ見ながらポケモンをしていた。レベルが40を越えて、物語も終盤に入ってきたこのあたりで、いつも終えたくなくて止まってしまうのは、きっとRPGあるあるなんだろう。SCCの忘年会があったけど、行けず。ひたすらチャージ。

『アンダーカレント』をおそらく学生ぶりに読み返す。当時はしっくりこないタイプの陰気さだな、と思っていたけど、人生が1周して、とてもしっくりきた。他には『どろろ』も読む。マンガを読むのは本を読むことよりもつかれるなあ。

 

12月11日(日)

朝、じゅんちゃんが松浦亜弥の「迷うなあ、セクシーなのキュートなのどっちが好きなの〜」の歌を歌ってた。「いや、セクシー一択でしょ」
と応える。
「だろうねえ。なんでキュートじゃだめなの?」
「まずね、キュートを演じる女子に対して目がハートになってる男子がずーっと嫌いなの!あとキュートってのはさ、この歌の場合、待ち、じゃん?セクシーはさ、自ら勝ち取ろうとする態度じゃん?だからだよ。キュートとかやってないで世界に対峙しろよ、って思うのよ」
「なにそれ〜!でも会ったころ、しゅんくんキュート好き派だと思ってたわ。地下アイドルとかとつきあってそうって……」

朝ごはん食べながら鳥羽和久『君は君の人生の主役になれ』を読む。基本的にいい本なんだけど、読者の心を先読みしたり、強い表現をくりだしたりする箇所に、それなりの違和感を得る。ヤングアダルト向けであるちくまプリマー新書だから、なお思うのか。

昼前、啓文堂。坂口恭平『継続するコツ』とふせん買う。ふせん読書再開しようと思うのは、電車で揺れながらボールペンでマルジナリアするのは危険だから。ちょうど本にケースごと貼れるやつがあって、めちゃいいと思って選んだ。これ作ったひと、マジわかってる。

それぞれのマシンを持って、駅ビルの1番上のカフェへ。オムレツサンドとアイスコーヒー。じゅんちゃんはスモークサーモンのサラダ。

窓際でそれぞれの作業を進めるのが楽しい。作業しつつ、大半が買おうと思う車のリサーチになる。気を取り直し途中から、『青の輪郭』3章のリライト。息抜きにDiscordでDWCをチェック。たかくらが立てた「スーパー自由川柳」ってチャンネルが昨日から盛り上がってで楽しい。川柳、とりあえず17音にまとめれば詩だから、これはいいかもしんない。

鍋の材料買って、切れてたコーヒー豆買って帰宅。UFC282をストリーミングで見つつ、『継続のコツ』をひらく。ピンブレットの判定、マジギリだと思う。ティルの試合おもしろかったけど、どっちもコンプリートファイターじゃないから見どころが生まれたんだと思うと、技術体系を完成させることと、試合の美は相反することもあるのだなと思う。完成したもの同士の試合は、リスクを避け合う時間が続き、玄人以外楽しめないのかもしれない。

夜、豚肉忘れたせいで、レトルトカレーに。ま、いっか。そのあともひたすらそれぞれに作業。たくさん書いたあとに削るタイプの推敲、マジ苦手。なぜならたぶん、ケチだから。がんばって大胆に削る。明日は整え。整え作業終わったら、午前に届くはずのポメラだけ持って、新章のドラフトやろう。楽しみ。